2023年トルコリラ円の見通し(今後)を過去10年チャートから予想

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著者:為替カバ 更新日:2023年10月23日

トルコリラ円の見通し(今後)を過去10年チャートから予想

こんにちは、為替カバです。
トルコリラは南アフリカランドと並んで、高い金利が魅力の通貨ですが、買ったとたんに暴落するのは避けたいところです。

そこで、トルコリラの今後の見通しを以下の点から調べました。

  1. トルコリラ円の過去10年のチャートで値動きを考察
  2. トルコリラ円の史上最安値の推移と、その理由
  3. トルコの政策金利は為替に影響する?
  4. トルコリラ円が上昇するのはどんな時?
  5. 2022年トルコリラの今後の見通し
  6. トルコリラの見通しに関係なく高いスワップ益を得るには?

1.トルコリラ円の過去10年のチャートで値動きを考察

トルコリラに投資する場合、まず知りたいのが過去の値動きです。過去10年超(2008年~2023年まで)のトルコリラの為替チャートを確認することで、今後の見通しをある程度予測できます。

トルコリラ円の過去10年のチャート

上の図は、トルコリラ円の過去10年の為替チャートです。
特に大きな値動きが7回発生しています。

トルコリラ円の主な為替変動履歴
No. 主な要因 変動率 概要
世界金融危機 41%
下落
2008年10月以降、100年に1度と言われる世界金融危機の影響で
トルコリラを含む多くの通貨が暴落
アメリカ国債
格下げ
23%
下落
2011年8月、格付け会社のS&Pがアメリカ国債をAA+に格下げ
アメリカ国債は約70年間最上級の格付けを維持してきたため、
世界中に衝撃が走り、世界経済は一気に冷え込むことに。
2011年10月には、当時の最安値1トルコリラ=40.25円を記録。
先進国の
金融緩和
33%
上昇
2013年前後、日本や欧米による金融緩和の実施の影響で、
リスクの高い資産に積極的に資金を振り分けるリスクオン
の状態になり、資金が新興国通貨のトルコリラにも流入。
中国経済の
景気減速
15%
下落
2015年8月、中国経済の景気減速の影響で、新興国通貨が暴落。
2015年9月には、当時の最安値1トルコリラ=38.99円を記録。
トルコ国内の
テロ頻発
25%
下落
2015年10月、アンカラで死者100名以上のテロが発生。
それ以降、断続的にトルコ国内でテロが発生。
2017年4月には、最安値1トルコリラ=29.08円を記録
アメリカとの
関係悪化
14%
下落
アメリカがトルコと敵対するクルド人武装勢力を支援したため
「トルコとアメリカが相互にビザ(査証)発給業務を停止」
という事態に陥り、トルコとアメリカの関係が悪化。
2017年11月には、最安値1トルコリラ=27.93円を記録
トルコリラ
ショック
14%
下落
アメリカ金利上昇懸念・トルコリラ格下げ・トランプリスク
・インフレ率の高止まり・トルコの政治リスクが重なり、
2018年8月、最安値1トルコリラ=15.34円を更新

これら、過去10年にトルコリラの為替相場が大きく動いた原因は、トルコ国内の経済やカントリーリスクだけでなく、世界経済の好不況も関係しています。

2017年以降、世界経済が悪化する原因は下の2つです。

原油安
原油安は、原油を輸入に頼っているトルコ経済にとってプラスです。
一方、中東産油国など資源輸出に頼る国にはマイナスです。
さらに石油開発への投資が滞り、原油の供給が将来的に不安定になる恐れがあります。
そのため、世界経済にもマイナスです。

GDP上位国の経済悪化
2015年8月に判明したGDP第2位の中国経済の景気減速は、トルコリラやランド円など、多くの高金利通貨の下落を引き起こしました。


2.トルコリラ円の史上最安値の推移と、その理由

トルコリラ円の史上最安値は、2023年7月の5.02円です。
トルコリラの最安値は、時期により下落理由が違いますので、時期別に紹介いたします。

2015年の最安値更新は世界経済の悪化が原因

2015年9月にトルコリラが最安値を更新した原因は、世界金融危機やアメリカ国債の格下げ、中国経済の景気減速など世界経済の悪化によるものが主でした。


2016年・2017年の最安値更新はトルコ国内のテロが主な原因

2016年以降の最安値の更新には、テロやトルコ政治の悪化が反映され始めました。
そして2017年4月14日、1トルコリラ=29.08円を記録し、最安値を更新しました。

一方で、トルコ政府がテロ対策を強化し、2017年5月以降は、死者が発生するようなテロはトルコ国内でほとんど発生していません。
さらに2017年7月、ISのイラク最後の主要拠点モスルが奪還され、ISが弱体化しました。


2017年2回目の最安値更新はアメリカとの関係悪化が原因

トルコとアメリカは、第2次世界大戦以降から長く同盟関係にあり、ISに対する軍事作戦でも、両国は協力関係にありました。

ところがアメリカは、ISへの軍事作戦でISに敵対するクルド人武装勢力を支援します。
一方トルコは、トルコからの分離独立を目指すクルド人武装勢力とは対立しています。
そのため、トルコとアメリカの関係は悪化していきます。
そして2017年11月22日、トルコとアメリカの関係が悪化する懸念が高まり、1トルコリラ=27.93円の最安値を記録しました。


2018年の最安値更新は複数の要因

2018年3月23日、1トルコリラ=25.96円を記録し、約3か月ぶりに最安値を更新ました。
さらに5月23日、1トルコリラ=22.36円を記録しました。
その後8月13日、1トルコリラ=15.34円を記録しました。
主な原因は、下の5点です。

  1. アメリカ金利上昇懸念
  2. トルコリラ格下げ
  3. トランプリスク(アメリカとの関係悪化)
  4. インフレ率の高止まり
  5. トルコの政治リスク

この5つが同時期に起こったため、トルコリラの最安値が2018年3月以降更新され続けました。


2020年の最安値更新は複数の要因

2020年に入ると、最安値を更新し続けます。
現在は2020年11月の、1トルコリラ=12.04円です。
原因は以下の通りです


2021年の最安値更新はエルドアン大統領による利下げ

利下げを好むエルドアン大統領によって、2021年9月・10月・11月・12月と、4か月連続で利下げされ、政策金利は19.00%→14.00%まで下がりました。

一方で、トルコのインフレ率は2021年1月 14.03%→2022年2月 48.69%と、上がり続けています。

金利よりもインフレ率のほうが高くなり、通貨への魅力が薄れ、トルコリラは暴落しました。

それにより、2021年12月20日、1トルコリラ=6.18円を記録しました。


2023年のインフレ率の継続的な高値

トルコのインフレ率は2022年以降、20%以上で推移しています。
金利よりもインフレ率のほうが高い状態が続き、トルコリラは暴落ししています。

それにより、2023年7月、1トルコリラ=5.022円を記録しました。


過去に上のような原因で、トルコリラは史上最安値を更新しました。

トルコリラの史上最安値について、詳しく調べたい方はこちらです
トルコリラ円の史上最安値とその原因 対策法は?


3.トルコの政策金利は為替に影響する?

トルコリラは高金利通貨で有名です。
そのため、私たち個人投資家からすると、政策金利が低くなれば魅力が薄れトルコリラが安くなり、政策金利が高くなれば逆にトルコリラが高くなるイメージがあります。

トルコの政策金利が上がった場合と下がった場合、為替レートはどのように変動するのか調べてみました。これについては、別記事で詳しく検証しています。

トルコの政策金利の推移と見通し 為替レートへの影響


4.トルコリラ円が上昇するのはどんな時?

2018年のトルコリラ円為替相場は、今後上昇することがないのでは?と悲観してしまうくらいの下落スピードでしたが、どのような条件がそろえばトルコリラは上がるのでしょうか?
調べてみました。

2008年1月以降、トルコリラ円が上昇した為替相場は以下の通りです。

過去10年で大きな上昇があったのはこの3回です。

2009年1月~のトルコリラ上昇要因

2008年にリーマンショックが発生し、2008年8月→2009年1月でトルコリラ円は41%も下落しました。2009年1月~の上昇は、暴落の反発といえます。

2012年1月~のトルコリラ上昇要因

日本や欧米による金融緩和(=政策金利引き下げ)の影響で、リスクの高い資産に積極的に資金を振り分けるリスクオンの状態が続いたためです。

2018年9月~の上昇要因

2018年1~8月にかけてトルコリラ円が暴落しました。特に2018年8月は、2週間で最大で31%も下落しました。2018年9月~の上昇は、暴落の反発といえます。

結論

2020年以降、新型コロナウィルスの影響で、世界各国の金融緩和(政策金利引き下げ)が相次いでいます。
その点では、他国よりも金利が高いトルコリラが上昇する可能性があります。
ただし、それには好景気状態での金融緩和という制限がつきます。
2022年2月時点では、まだ好景気とはいえない状況です。

さらに、トルコ国内のインフレ率が高い状態で、政策金利を下げにきました。
今のところ、トルコリラが下落する材料はそろっていますが、上昇する材料は見当たりません。


5.2023年トルコリラの今後の見通しは?

直近3か月のトルコリラ円為替チャート

下の図は直近3か月のトルコリラ円の為替チャートです。

直近3か月のトルコリラ円の為替チャート

この3か月で、1トルコリラ=5円台のレンジ相場です。

直近1年のトルコリラ円為替チャート

下の図は直近1年のトルコリラ円の為替チャートです。

直近1年のトルコリラ円の為替チャート

8円台から5円台へ下落しています。

では2018年以降に起こった、トルコリラの為替相場に関連する主なニュースを紹介します。

世界の景気関連ニュース

2018年2月2~5日 米国のNYダウ平均が暴落し、各国の株に連鎖する世界同時株安が発生
高金利のトルコリラを売って、信頼性の高い円を買う動きになりました。

2018年3月1日 トランプ大統領の発言で世界同時株安が発生
トランプ大統領が「鉄鋼に25%・アルミニウムに10%の関税をかける」と発表したことで、高金利のトルコリラを売って、信頼性の高い円を買う動きになりました。

2019年5月5日 トランプ大統領が対中関税25%に引き上げを発表
2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10日から現在の10%から25%に引き上げると表明し、中国への圧力を大幅に強めました。

2020年3月 新型コロナウィルスの感染拡大
この状況は、世界中で、現在進行形で起こっていて、まだ終息の兆しは見えません。

トルコリラ格付け関連ニュース

2018年3月8日 格付け会社ムーディーズ トルコリラの格付けをBa1→Ba2に格下げ
これにより、トルコリラの円高が進みました。

2018年5月2日 格付け会社S&P トルコリラの格付けをBB→BB-に格下げ
これにより、トルコリラの円高が進みました。

2018年5月22日 格付け会社がトルコ政治に懸念
トルコのエルドアン大統領に対して、格付け会社のフィッチ・レーティングスは、
「トルコ中央銀行の独立性が損なわれ、トルコ国債の信用低下につながる可能性がある」
と懸念を表明し、その後トルコリラ円は最安値を更新しました。

トルコ経済関連ニュース

2018年3月15日 アメリカ・トルコ会談が延期
アメリカのティラーソン国務長官の解任により、3月19日に予定されていたアメリカ・トルコ会談が延期になりました。アメリカとトルコの関係も悪化するのではとの見通しで、トルコリラ円の円高が進みました。

2018年5月~9月 トルコリラ政策金利を利上げ
トルコの政策金利を13.5%→24.0%まで断続的に利上げし、若干円安に戻りました。

2018年8月10日 トルコショック
トルコ政府が米国人牧師を拘束した問題で、アメリカとの関係が悪化し、トルコリラ円の下落率は20%近くになりました。

2019年3月22日 JPモルガン・チェースのアナリストがトルコリラ売りを推奨
この日だけで20.11円から19.07円まで1円以上下落しました。
ただし、この情報はトルコ当局によるものです。

2019年5月6日 イスタンブール市長選 野党勝利後、再選挙することに
最高選挙管理委員会、3月のイスタンブール市長選結果を無効とし、6月23日にやり直し選挙を実施すると発表しました。これにより、トルコリラ円の円高が進みました。

2019年6月23日 イスタンブール市長選 再選挙でも野党勝利
イスタンブール市長選のやり直し選挙でも野党が勝利し、エルドアン大統領の与党が敗北しました。ただし、エルドアン大統領の任期は2023年まで残っています。。

2019年7月6日 エルドアン大統領がトルコ中央銀行総裁を更迭
エルドアン大統領が「必要な措置を講じなかった」という理由で、トルコのチェティンカヤ中央銀行総裁を更迭しました。そのため、トルコ中央銀行の独立性が不透明になり、エルドアン大統領が後任の総裁に利下げを強いる可能性が高まりました。

さらにトルコの主な経済指標であるインフレ率と、経済成長率の推移も確認しました。

トルコのインフレ率(消費者物価指数)

2011年~2022年のトルコ平均インフレ率は16.24%と高いです。

トルコ インフレ率の推移

トルコのインフレ率推移(カッコ内は日本のインフレ率)
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
6.47%
(-0.27%)
8.89%
(-0.06%)
7.49%
(0.34%)
8.86%
(2.76%)
7.67%
(0.79%)
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
7.78%
(-0.11%)
11.14%
(0.47%)
16.33%
(0.98%)
15.46%
(0.99%)
12.27%
(-0.03%)
2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
19.60%
(-0.26%)
73.13%
(+1.99%)

より詳しくはこちら→トルコ インフレ率の推移


トルコの経済成長率(GDP成長率)

トルコの経済成長率はリーマンショックの影響を受けた2009年以外は、年単位ではずっとプラスの成長率で推移しています。

トルコの経済成長率推移
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
+11.1% +4.8% +8.5% +5.2% +6.1%
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
+3.2% +7.4% +3.0% +0.9% +1.9%
2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
+11.4% +5.57%

さらに2023年トルコ経済成長率です。

2023年 トルコの経済成長率推移
1~3月 4~6月 7~9月 10~12月
+4.0% 3.8% 11月30日発表

2023年も引き続き順調です。


2023年トルコリラ円の見通し 結論

トルコ経済は、インフラの整備などに不足する資金を、海外からの借り入れに依存しています。
そのため、

となります。現在、米ドル政策金利は5.50%です。
緩やかに上昇しているものの、トルコの政策金利よりは低いです。

ただし、トルコでは現在、
インフレ率 > 政策金利
の状態です。
つまり、金利よりも通貨の価値が下がるスピードが速く、高金利の魅力が薄れています。
さらに、今は新型コロナウィルスというやっかいな病気が拡大しています。

●トルコリラ安の要因

  1. 新型コロナウィルスの感染拡大→終息?
  2. 高インフレ率→40%台と急激に上昇
  3. 米中貿易摩擦の懸念→新型コロナウィルスの影響で下火
  4. アメリカとの関係悪化→新型コロナウィルスの影響で下火
  5. エルドアン大統領の動向→トルコリラの利下げ姿勢変わらず
  6. トルコ経済成長率の落ち込み→最悪期は脱した模様
現時点のトルコリラ安への影響度
新型コロナ インフレ率 米中貿易摩擦 対米関係 エルドアン
大統領
経済成長率

●トルコリラ高の要因

  1. 暴落(トルコリラショック)の反発→現在暴落中
  2. 米ドルの政策金利→変わらず
  3. 中国との経済協力→大きな進展なし
現時点のトルコリラ高への影響度
暴落の反発 米ドルの政策金利 中国との経済協力

これらから、今後6か月のトルコリラ円の予想レンジは、4円台~6円台です。

トルコリラ円を「買い」で保有したい場合、1年以上の長期保有は避け、1か月で10%以上下落した際に、暴落の反発を狙って短期保有するなど、為替相場を見ながらタイミングよく投資するのをおすすめします。


6.トルコリラの見通しに関係なく、高いスワップ益を受け取るには?

トルコリラを保有する場合、高い金利は魅力なのですが、突然暴落するのが一番のリスクです。

そこで、為替レートに左右されることなく、トルコリラの高いスワップポイントのみを受け取る方法を検証しました。
トルコリラ円でスワップ金利のサヤ取り



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